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【専門家に聞く】長引くコロナ禍、子どもたちの心のストレスを受け止めるには

約2年ほど前、新型コロナウイルスの特徴がまだ分かっていない頃、学校の一斉休校がありました。その後も長く続くコロナ禍。制約の多い生活を強いられてきた子どもたちの心身にはどんな影響が出てきているのでしょうか。
順天堂大学医学部小児科の准教授、田中恭子さんは以下のように解説しています。

突然生活様式の変化を強いられた2年前で変わってしまった子どもたち

今まで普通に過ごしたのに、突然それまでの生活ができなくなったのが2年前。生活様式の変化は、様々な面で子どもたちにストレスを与え続けてきたのではないでしょうか。

子どもたちはストレスがかかると、おなかが痛い、頭が痛いなどの症状が出てきます。また親と離れると不安感が強くなる「分離不安」の子もいます。

東京都の小児科医会が地域のかかりつけ医にアンケートを行ったところ、不登校や登校渋りの子も増加していました。
自宅にいる時間が増え、ネットやゲームに依存度も高くなりました。

国立成育医療研究センターの調査では、2020年度、神経性食欲不振症(神経性やせ症)の初診の外来患者が前年と比べて6割増えたことが分かりました。これもコロナ禍でのストレスや不安感が影響していると推測されています。

今症状が出ていない子も今後は要注意

今症状が出ていないからと言って安心してはいけません。コロナの渦中にいる今、身体の防衛反応が働き、疲労やストレスに気付かずに頑張りすぎてしまっている可能性もあります。
感染が落ち着いたときに、これまで内に収めていたさまざまなものが吹き出すように表面化し、心身に不具合が出てくる可能性がある、と専門家は指摘しています。

同じく、国立成育医療研究センターが2020年11~12月に行ったアンケートによると、小学4~6年生の15%、中学生の24%、高校生の30%に、中等度以上のうつ症状がありました。
大人がストレスを感じ、子どもを虐待してしまう例も出てきているようです。

子どもは子どもなりに悲しみや不安、怒りの気持ちを解決しようとします。それが内向きに働く場合は、自傷行為が生じることもあります。外に向く場合は他人を攻撃したりすることもあります。

生活リズムの崩れが引き起こす二次的な影響

新型コロナの直接の影響ではなく、生活リズムが大幅に乱れたことによって引きおこる二次的な被害が心配されます。特に受験期には学業の影響もあり、子どもたちはいつも以上に神経質になるでしょう。

また、もともと対人関係が苦手なタイプの子は、学校が再開したときにその波に乗れず、さらにうつの気持ちが高まることもあります。短期間の休校でもしっかり子どもたちを見る必要があります。

子どもにとっては、学ぶ権利や遊ぶ権利がずっと奪われたままです。他に学びの機会や遊びの機会を提供できないか、子どもたちと一緒に考える必要がありそうです。

長引くコロナ禍、大人も子どももどうやって乗り切ればいいの?

大人も子どももセルフケアが大切です。大人はゆったりとした時間を持つ、好きな食べ物や飲み物をゆっくり味わうなどもいいでしょう。
子どもは家の中で楽しめること、やっていて心地よいことを見つけるのがいいでしょう。

大人は子どもに対して、話に耳を傾け、気持ちを無視せずに寄り添ってあげることが大切です。
子どもの自尊感情を育てるためには、当たり前のようにできていることでも言葉にしてあげるのがいいでしょう。例えば「頑張っているね」「よくやっているね」などです。

いつもよりも少し多めに褒めてあげる、そんな気持ちをもって子どもに接することが大切のようです。

2022年2月27日(日)朝日新聞朝刊より出典・引用しています。