早期教育の育脳効果についての疑問が広がる中、子どもの未来への期待から教育への投資が増加しています。
乳幼児から児童期にかけ、「脳を育てる・育脳」という言葉が頻出している昨今。
しかし、本当に早期の教育投資が将来の成功に繋がるのでしょうか。
その答えを探るため、重要な研究結果をご紹介しましょう。
IQと将来の影響
高いIQが将来の成功や幸福に直結するというイメージは一般的ですが、その裏には一部の誤解が含まれています。
例えば、カリフォルニアの研究では、25000人以上の学童から選ばれた1500人の高IQ児童を対象に、子どもたちの成長を追跡しました。結果として、児童期のIQが30歳になってもほぼ同じであることが示されました(IQの恒常性)。
高IQの子どもたちは高所得者になる可能性が高いという結果から、「高IQの子供は将来幸せになれる」という神話が生まれ、IQテストが教育において重要視されたのです。
現在では、IQよりも非認知能力(例: グリットや粘り強さなど)が将来の成功に影響を与えるとされています。
しかし、大事なのは「子どものIQが何も影響を持たない」ということではなく、「子どものIQが人生全体においてすべてを決定するわけではない」という点です。
IQは非認知能力と同様に重要であり、高いIQは優れた学業成績と関連しています。
また、IQは一貫性を持ち、7~10歳のIQがその後のIQに影響を及ぼすことが確認されています。
さらに、児童期の低IQは青年期の問題行動や10代での妊娠率、暴力行動と結びついているという結果も。
また、イギリスの研究によれば、低IQは将来の心臓病、脳卒中、ガンなどの死亡率の上昇とも関連しています。
これは、高IQの人々が健康に関する知識が豊富で喫煙率が低く、より良い職場環境にある一方、低IQの人々が健康リスクにさらされる可能性が高いためです。
子どものIQと脳の発達・保護者が知っておきたいこと
IQと脳の成長には密接な関係があります。特に前頭前野という脳の部位がIQと結びついています。
アメリカ国立衛生研究所の研究では、子どもたちをIQに基づいて3つのグループに分け、脳の発達との関係を調べました。
驚くことに、7歳の時点で前頭前野が最も発達していたのは「平均的知能」と「知能が高め」の子どもたちで、一方で「特に知能が高い」子どもたちはその時点では脳の成長が少なかったです。
しかし、特に高い知能の子どもたちは7歳から12歳までに急速に前頭前野が成長し、12歳前後には平均的な知能の子どもたちよりも脳が発達していました。
ただし、この研究は子どもたちの教育環境については調べていません。つまり、教育が成長にどのような影響を与えるかは不明です。しかし、早期の教育が必ずしも有益であるわけではない可能性を示唆しています。
また、IQの大部分は遺伝によるものであり、遺伝子もIQに影響を与えます。
したがって、保護者は子どものIQを高めたいと考える場合、遺伝的な要素も考慮すべきです。
保護者は自分の能力に合わせて子どもへのプレッシャーをかけないようにし、子どもに対して愛情と支えを提供することが大切でしょう。
子どもの教育において、リラックスした雰囲気と親子の絆が大きな役割を果たします。