子どもがなかなかご飯を食べてくれない、好き嫌いが多くて栄養面が気になる・・・。子どもの偏食は育能にも影響を及ぼすとされているので、心配ですね。
このような子どもの偏食や小食に関する悩みを、薬局で相談できる新たな支援体制が整いつつあります。
この取り組みは、子どもの食事に関して自身も苦労した経験を持つ母親たちがつながり、協力しながら実現させたものです。
現在では、薬剤師や管理栄養士などの専門家が、子育て家庭の食の悩みに寄り添い、サポートを提供するネットワークとして広がりを見せています。
(※2025年9月2日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
子どもの偏食に専門家が対応、薬局から始まる支援の輪
福岡県を中心に約120店舗を展開している大賀薬局(福岡市)は、この春、子どもの食に関する問題に取り組む企業やNPOと連携し、「こども偏食医療ネットワーク」を立ち上げました。
その第一歩として、福岡市東区にある大賀薬局・舞松原店に、無料で相談できるコーナーが設けられました。
この窓口では、管理栄養士が食に関するアドバイスを行い、必要に応じて医療機関での血液検査や診察を受けられるように支援しています。
7月末までに、すでに4組の親子がカウンセリングを受けたとのことです。
現在、この福岡での取り組みをモデルとして、東京都や岩手県でも同様の支援体制の構築に向けた準備が進められています。
子どもの偏食に寄り添う支援を町の薬局から―自身の経験が原点
「こども偏食医療ネットワーク」の設立に関わった一人である田島由佳さん(46/大阪府在住・ロート製薬勤務)は、かつて自身の育児において子どもの偏食に深く悩んだ経験があります。
長女(17)は乳児の頃から哺乳瓶を嫌がり、離乳食を与えてもすぐに吐き出してしまい、2歳になるまでほとんど母乳だけで育てることになりました。
育児書を参考にして離乳食の味つけを工夫したり、哺乳瓶を約10種類も試したりしましたが、どれも効果はありませんでした。
自治体の離乳食講座や小児科にも相談に足を運びましたが、原因は特定できませんでした。
その後、田島さんは企業の保健師として働き始め、多くの保護者が同じように子どもの食事について悩んでいることを知ります。
特に職場の同僚たちが苦しむ姿に、かつての自分を重ねたといいます。
「もっと気軽に、日常の中で相談できる場所はないだろうか」と考えた田島さんが注目したのが、身近な存在である街の薬局でした。
管理栄養士が常駐していながら、実際には品出しやレジ対応などに追われ、専門的なスキルを十分に活かせていないという現場の声を耳にしたことがきっかけでした。
薬局を拠点に支援体制を作りたいという思いから、社内の起業支援プロジェクトに応募し、合同会社を設立。
子どもの食に詳しい人材を増やすことを目指して、専門医の監修のもと、管理栄養士・薬剤師・保育士などを対象にしたアドバイザー養成講座を開講しました。
子育ての悩みを薬局でも支える取り組み、地域支援ネットワーク
アドバイザー講座の受講者の一人に、大賀薬局舞松原店の副店長で管理栄養士を務める松崎結さん(44)がいました。
松崎さん自身も、子育て中に食に関する悩みを抱えた経験がありました。
その思いを会社に伝えた結果、店舗内に相談窓口を設置し、自らが窓口対応を担当することとなりました。
さらに、福岡市のNPO法人「はぐもぐ」で子育て支援活動を行う小浦潔恵さん(48)の協力を得ながら、県内の小児科医や専門外来の医師たちと連携する体制を整え、福岡でのネットワークの立ち上げが実現しました。
また、他のアドバイザー講座の修了者や、管理栄養士のやりがい向上に力を入れている薬局を中心に、東京都や岩手県でも同様の支援ネットワークを構築する動きが進んでいます。
ネットワークの立ち上げに携わった田島由佳さんは、「保護者は、子どもを育てる責任感やプレッシャーで、つい無理をしてしまうことがあります。食事の時間が親子にとって楽しいものになるように、地域ぐるみの支援の輪を広げていきたいです」と語っています。